近年、発生現象の多くがリガンドとその受容体を介したシグナル伝達の言葉で語られるようになってきた。我々は運動ニューロンの回路網形成においてもそのようなシグナルが働いている可能性があると考え、ニワトリ胚から運動ニューロンを精製し、RT-PCR法により運動ニューロンに特異的に発現される受容体型チロシンキナーゼをスクリーニングした。その結果、EphサブタイプであるEph A3、Eph A4が運動ニューロンのサブタイプに一過性に発現していることを見い出し、そのリガンドephrin-A2、ephrin-A5は運動ニューロン軸索が成長しない領域に発現され、これらリガンドによって培養下の運動ニューロンからの神経突起成長が阻害された。これらのことから、Eph受容体型チロシンキナーゼとリガンドは神経回路形成の最も重要なステップである軸索成長に阻害的に働くガイダンス因子として、運動ニューロンにおいても機能すると考えられた。 Eph受容体型チロシンキナーゼとそのリガンドが、果たして運動ニューロンの筋への投射において軸索成長のガイダンス因子として機能しているかどうかを胚内で明らかにすることが必須である。クロストークが盛んでリガンドと受容体との関係が1対1に対応していないEphチロシンキナーゼの解析に、機能阻害抗体を複数同時に投与することは有効な解析法であると考え、それぞれの機能阻害抗体を開発し、胚内での機能解析を試みた。さらに、in vivo電気穿孔法により機能不全遺伝子を運動ニューロンに導入することを試みた。現在のところ、両者のアプローチ共に明確な結論を得ることが出来ていない。
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