研究概要 |
淡水の腔腸動物ヒドラから発生に関与するペプチド性シグナル分子を包括的に分離同定するプロジェクトを進めている。本年度は,以下の実績を得た。 1. 新たなペプチド分子の単離;約200種のペプチドを精製単離し,90種についてアミノ酸配列を決定した。 2. ヒドラ足部形成活性化ペプチドHym-323とHym-346の詳細な機能解析:2ペプチドともヒドラ体幹の位置価を下げることで,足部化を促進する結果を得た。 3. Hym-323とHym-346をそれぞれコードする遺伝子の単離とその発現パターン:共に全長cDNAをクローン化し,塩基配列の決定を行うと共に,in situ hybridization法を用いて発現パターンの解析を行った。Hym-323とHym-346共にそれぞれの前駆体タンパクに1コピーのみコードされていた。Hym-323は体幹のほぼ全域の上皮細胞で,一方,Hym-346は足部と触手の内胚葉上皮で発現が見られた。触手での発現については解析中である。 4. ヒドラの神経分化を正に制御する神経ペプチドHym-355の詳細な解析とその遺伝子クローニング:Hym-355は神経に由来し,神経分化の初期過程を阻止することが明らかになった。遺伝子のクローニングとその発現パターンの解析からも,頭部と足部の神経で強く発現するペプチドであり,神経分化の正のフィードバックシグナルと示唆された。
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