研究概要 |
淡水の腔腸動物ヒドラから発生に関与するペプチド性シグナル分子を包括的に分離同定するプロジェクトを進めている。本年度は,以下の実績を得た。 1.新たなペプチド分子の単離:約150種のペプチドを精製単離し,60種についてアミノ酸配列を決定した。 2.ヒドラ足部形成活性化ペプチドHym-323の詳細な機能解析:足部形成をペルオキシダーゼ活性で調べる方法を導入し,定量的なアッセイ法を確立した。この方法でも,Hym-323の足部形成促進活性が確認された,また,Hym-323に対する抗体を作成し,ペプチドの組織内局在を調べた結果,遺伝子の発現とよく対応し,触手,口丘先端部及び足盤を除くほぼ全域に存在する。 3.ヒドラの神経細胞は常に幹細胞から分化し,組織のターンオーバーとともに捨てられてゆく。しかし,体内での神経細胞の密度は一定に維持されている。この様な神経集団のホメオスタシスを制御する分子として,神経ペプチドHym-355と上皮ペプチドPW族を同定した。これらのペプチドの働きを詳細に解析した結果,これらのベプチドのバランスで神経のホメオスタシスが一定に保たれると結論した。
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