概日リズム発現とその制御機構の分子機能形態学的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09480212
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 岡村 均 神戸大学, 医学部, 教授 (60158813)
• 研究分担者: 重吉 康史 神戸大学, 医学部, 助手 (20275192) ; 内匠 透 神戸大学, 医学部, 講師 (00222092)
• キーワード: 哺乳類period遺伝子 / 視交叉上核 / 内因性リズム / 光誘導

研究概要

ショウジョウバエ時計遺伝子Periodの哺乳類ホモローグの視交叉上核での時間特異的発現を我々は初めて報告した(Nature, 1997)。さらに我々は、この哺乳類時計遺伝子mPer1の発現が、光による行動リズムの位相変位にどのように関与するかを検索した。まず、フリーラン条件下で、mPer1 mRNAの視交叉上核での発現を検索すると、約23時間間隔の発現変動が数周期にわたり観察された。この事は、行動リズムと同様、視交叉上核でのmPer1の発振メカニズムは恒常暗条件にても安定であることを示している。また、主観的暗期に光パルスを与えると、視交叉上核でmPer1の遺伝子が誘導された。この光による一時的なperiod遺伝子の発現はショウジョウバエでは認められておらず(ショウジョウバエではTIMELESS蛋白の急速な分解が知られている)、哺乳類に特異的な現象と言える。これに良く似た光による誘導現象はアカパンカビ時計遺伝子frqに認められ注目される。また、この発現は、光量のlog値に比例して上昇した。この事は、mPer1の発現程度と行動位相変位の程度が全く相関する事を示しており、mPer1発現が位相変位に関与していることをさらに想定させる。以上の結果は、哺乳類リズム発振においてもperiod遺伝子が中核的な働きをする可能性を示唆しているが、今後の重点課題としては、蛋白質レベルの解析が重要である。

研究成果

• [文献書誌] Shigeyoshi,Y.: "Light-induced resetting of a mammalian cercadian clock is associated with rapid induction o f the mPer1 transcript" Cell. 91. 1043-1053 (1997)
• [文献書誌] Tei,H.: "Circadian oscillation of a mammalian homolog of the Drosophila period gene" Nature. 389. 512-516 (1997)
• [文献書誌] Ban,Y.: "Development of circadian VIP rhythm in the rat suprachiasmatic nucleus" J. Neurosci.17. 3920-3931 (1997)
• [文献書誌] Shigeyoshi,Y: "Coexistence of preprosomatostatin and prepro-tachykinin A mRNA in neurons of the rat SCN" Mol. Brain Res.48. 159-163 (1997)
• [文献書誌] Ibata,Y.: "The suprachiasmatic nucleus : A circadian oscillator" Neuroscientist,. 3. 215-225 (1997)
• [文献書誌] Kawakami,F.: "Loss of day-night differences in VIP mRNA levels in the suprachiasmatic nucleus of aged rats" Neurosci. Lett.,. 222. 99-102 (1997)