研究概要 |
ショウジョウバエでは生体リズムを司る時計遺伝子periodが既にクローニングされ、その発振機構の解明が進んでいるが、平成8年の時点では、哺乳類では全く不明であった。平成9年度より、我々は、東京学医科学研究所の程・榊グループと哺乳動物の生物時計の構成分子の検索を始め、リズム発振に重要とされるショウジョウバエperiodのPASシークエンスに当たる部位でdegenerate primerを作製し、PCRスクリーニングをヒトゲノムライブラリーで行った結果、periodホモローグであるヒト時計遺伝子hPer1、マウス時計遺伝子mPer1を世界で初めてクローニングした。マウスにおいては、リズム中枢のある視交叉上核で昼は強く発現し、夜はほとんど発現せず、この性質は明暗条件下、恒常暗条件下ともに認められる性質であった(Nature1997)。さらに、この遺伝子の転写は、光刺激により急速に誘導されること、また、この遺伝子誘導が行動リズムの位相変動に極めて近似した現象であることを見出した(cell,1997)。続いて、同じくperiodホモローグのmPer2,mPer3という第二、第三の全くリズム特性が異なる遺伝子を発見した(Genes cells,1998;EMBO J.,1998)。ごく最近、mPer1とヘテロダイマーを形成する哺乳類Timelessのクローニングにも成功した(Genes Cells,1999)。
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