研究概要 |
当該研究期間において、in vivoからin vitroにわたる広汎な研究を展開した。末梢神経、脊髄、脳において3種類の神経損傷モデル(CCl、脊髄損傷、脳虚血)を作成し、各種サイトカイン、神経栄養因子(NGF,BDNF,NT-3)、IEGs(fos family,jun family)発現の時間的・空間的分布とそれぞれの産生細胞について検討を行い、これらの物質が損傷/修復過程において果たす役割について考察した。次に、サイトカインの中でもneuropoietinとして知られるIL-6 family cytokinesに注目してその受容体の構成成分であるgp130,LIFRβ,I-6R,OSMRの脳での分布、またそのシグナル伝達に関与するJAK-STAT系の発現について検討した。小脳のPurkinje細胞では、これらの受容体構成成分が発現していた。LIFの過剰産生マウスを作成したところ、Purkinje細胞の樹状突起が著明に退縮していることを見い出した。また、上頚神経節ニューロンの樹状突起による局所回路の再構成に、血中の微量因子が関与していることを明らかにした。筋挫傷後の再生過程に、LIF、IL-6、CNTFなどが関与することをその受容体の発現から明らかにした。魚膜やレンズ、胃粘膜の直接損傷後の修復に関与する因子についても検討を加え、c-fos KOマウスやc-fos,c-junに対するアンチセンスODNを用いた実験から、これらの再生過程のトリガーとしてIEGsが重要な役割を果たしていることがわかった。血管平滑筋細胞を用いたin vitroの系においてAP-1は、BDNF遺伝子の発現を促進し、NT-3遺伝子の発現を抑制することを明らかにした。これらの実験に平行して、将来の遺伝子治療をめざし、AdVにGFPや各種栄養因子のcDNAを導入した組替え体を作成し、一次知覚伝達系を用いて基礎実験を行った。
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