研究概要 |
小脳顆粒細胞がアポトーシスを起こす系を用いて、これに応答するミクログリア遺伝子mrf-1(microglial response factor-1)を見いだした(Tanaka et al.,1998)。mrf-1遺伝子の活性化はプログラム細胞死として知られる小脳顆粒細胞死に応答するのみならず、成熟した顆粒細胞に対するグルタミン酸毒性(ネクローシス)にも応答した(Tanaka et al.,submitted)。また、in vivoでは、ラット小脳におけるmrf-1mRNAの発現レベルをノーザンブロット法で調べると、生後0から1週間後で高く、以降徐々に減少していった。免疫組織染色からも、幼若期ではミクログリアは良く染色され、成熟するとラミファイド型ミクログリアの細胞体及び突起全体に弱い染色性が認められた。アメーバ型ミクログリアでは発現レベルは高い。これは小脳の発達過程と良くあい、プログラム細胞死が終了すると染色性が低下する傾向にある。免疫組織染色によりin vivoの小脳を中心に抗体染色を行い、この抗体がミクログリアの同定に有用なことを証明した(Tanaka et al.,submitted)。ラットの発達過程における小脳のミクログリアの動態を調べた。更に、舌下神経や座骨神経などの神経突起切断(axotomy)による神経細胞変性に応答して転写活性や免疫染色性が顕著に増加することが証明された。その生理学的作用に関しては、蛍光標識した酵母を貧食のマーカーとして用いた実験から、貧食過程そのものに関与している可能性は低い。しかし、細胞死に応答したmrf-1mRNAの発現発現の増加とともに脱分極やカルシウム流入によってこの発現が低下することがわかり、ミクログリア及びそれをを取り巻く環境に敏感に応答するセンサーの役を果たしている可能性が考えられた。
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