研究概要 |
細胞内のCaをセカンドメッセンジャーとするCaシグナリングは,数多くの受容体の下流に存在する重要な信号伝達機構の一つである。リアノジン感受性の細胞内Caプールを開く細胞内リガンドはサイクリックADPリボース(cADPR)であると考えられるようになってきた。しかし、cADPRがIP3のようなセカンドメッセンジャーであるとする仮説を正しいものとするためには,NADからcADPRが産生される代謝酵素が受容体によりコントロールされていることを示す必要がある。そのため、今年度は,NADからcADPRを産生する酵素であるADP-リボシールシクラーゼの活性を現在行われているHPLC法によらず薄層クロマトグラフィー(TLC)でより簡便に行える測定法を開発することにした。NG108-15細胞およびムスカリン性受容体m1〜m4を大量発現した細胞あるいはラット脳から膜分画を調整して,[^3H]NADを基質およびトレーサーとして用い、シリカゲルTLCに対し,種々の展開剤を試し,アイソトープ標識のNAD,ADPRやcADPRの分離が十分行える条件を見い出した。この方法で測定したADPRシクラーゼはアセチールコリンでその酵素活性を変化させた。細菌毒素により変化が消失したことからGたんぱく質が関与していることがあきらかになった。来年度の課題として、この測定法に精度をより高めることGたんぱく質の種類を同定すること、ADPRシクラーゼを精製してどのようなたんぱく質であるか決めることが必要であることが明らかになった。
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