研究概要 |
1.抗PSD抗体を作成し,ラット大脳のcDNAライブラリーからエクスプレッションクローニングを行った結果,いくつかのクローンを拾った.そこには既知のタンパク質(フォドリン,プレクチン,ニューロフィラメント)をコードするものもあったが,未知の遺伝子も含まれていた.未知の遺伝子のクローニングを進めた結果,一つの新規遺伝子の塩基配列を決定した.ホモロジー検索を行った結果,synGAPの一つのisoformであることがわかったので,仮にsynGAP-βと命名した. mRNAは約6キロベースで,比較的発育の早い段階から発現しており,老化脳では発現が減少していた.in situ hybridizationを行い,ニューロンに局在すること,タンパク質はシナプス後肥厚部画分に限局することを明らかにした.また,少なくとも7種のsynGAP mRNA,5種のsynGAPタンパク質を同定した. 2.未知のシナプスタンパク質を認識する別の抗体を用いて,エクスプレッションクローニングを行った.その結果,全長3960bのDNAをクローニングし,2903bのcoding regionを同定した.アミノ酸配列では細胞膜と細胞骨格とのクロスリンカータンパク質であるtalinやその類縁タンパク質とカルボキシル末端側半分にホモロジーがみられた.また全体としてはHuntingtin-interacting protein(HIP)とホモロジーがあった.Northern blottingおよびin situ hybridizationでは,脳に広く発現がみられた.また,脳の他にはtestisに強い発現が見られた.フュージョンタンパク質を抗原として抗体を作成し,タンパク質の分布を調べたところ,脳とtestisに発現していた.また,神経細胞内ではシナプトソーム,シナプス膜画分に局在していた.以上の結果,このタンパク質のシナプス機能,Huntingtinとの連関が示唆された.
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