研究概要 |
私達は,10数年来Ca^<2+>/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMキナーゼII)を研究し,最近はとくに,細胞外からの神経伝達物質,細胞増殖因子の刺激に反応して活性化されることを,初代培養細胞や確立した細胞系を用いて明らかにした。また,シナプス伝達長期増強にともなった酵素活性の増強を調べた。培養細胞を用いることで,in vivoに近い系での酵素活性化反応と細胞機能を研究することができる。 本年度は,種々の培養細胞を用い,別のCaMキナーゼであるCaMキナーゼIVに注目し,その活性化反応を検討した。CaMキナーゼIVはCaMキナーゼキナーゼ(CaMキナーゼK)によって活性化され,核に局在している。1)海馬初代神経細胞を用い,グルタミン酸刺激に反応して,CaMキナーゼIVはリン酸化された。2)リン酸化反応のピークは,刺激後約3分にピークを認め,急速に減少した。3)グルタミン酸受容体の作動薬,拮抗薬の研究から,CaMキナーゼIVリン酸化反応に関与するグルタミン酸受容体はNMDA受容体であることが明らかになった。4)グルタミン酸刺激後,細胞をホモジナイズし,CaMキナーゼIVに対する抗体で免疫沈澱し,沈殿物について酵素活性を測定した。CaMキナーゼIVは,リン酸化反応に伴い,活性化されていることがわかった。5)グルタミン酸刺激時に,カルシニューリンの特異的阻害薬であるサイクロスポリンA(CsA)を添加すると,CaMキナーゼIVリン酸化反応,活性化反応は増強した。カルシニューリンによって脱リン酸化されないCaMキナーゼII自己リン酸化反応は増強しないことから,CaMキナーゼIVがカルシニューリンによって脱リン酸化されることが示された。6)in vitroでCaMキナーゼKでリン酸化されたGST-CaMキナーゼIVはカルシニューリンによって脱リン酸化された。現在,CaMキナーゼIVリン酸化,活性化反応の性質をさらに解析している。
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