研究概要 |
(1) シアル酸を含む糖鎖化合物であるガングリオシドが、脳シナプスにおける神経伝達を修飾することを見い出してきた。シナプス伝達のモニターに2つの方法を用いた。(1) モルモット脳海馬のスライスを用いて、シナプスの長期増強形成がガングリオシドGMIとGQ1bで促進されることを証明した。ガングリオシドがシナプス効率改善に有効であるかどうかについて議論が分れていたが、今回の研究で明確な答を出した(Exp.Brain Res.,123:307-14,1998) (2) ラット脳シナプトソームの系を用いて、アセチルコリン合成と放出、および電位依存性カルシウム流入をモニターした。主要な脳ガングリオシド(A,B系列)がカルシウム流入を亢進してアセチルコリンの放出促進をもたらすことを明らかにしてきたが、本年度はコリン性ニューロン特異的ガングリオジドChol-1α(アルファ系列)がアセチルコリン合成を高めることを見い出した。その作用機作として、Chol-1αはシナプスにおける高親和性コリン取込みを促進することがわかった。コリントランスポーターに対するChol-1αの作用は、前年度明らかにしたガングリオシド合成アナログの一つであるβ-シアル酸コレステロールによってミミックされることが明かとなった。
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