研究課題/領域番号 |
09480227
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
関野 祐子 群馬大学, 医学部, 助手 (70138866)
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研究分担者 |
林 謙介 群馬大学, 生体調節研究所, 助教授 (50218567)
白尾 智明 群馬大学, 医学部, 教授 (20171043)
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キーワード | 海馬スライス / 長期増強 / 記憶 / 光学的測定法 / 膜電位感受性色素 / アデノシンA1受容体 |
研究概要 |
海馬内情報処理に関する理論的アプローチは今日盛んになされている。しかし、それらの理論はこれまでの定説的回路(海馬歯状回-CA3-CA1)にもとづいたものであり、海馬CA2領域は考慮されていなかった。ラット海馬のスライス標本を用いて、歯状回からの出力線維(mossy fibers)を電気刺激して生ずる興奮伝播を膜電位感受性色素を用いた光学的測定法により解析した結果、CA2領域が海馬内ネットワークに重要な役割を果たすことを見いだした(J.Neurophysiol.1997発表)。従って、脳内の状態に応じてCA3-CA1経路とはまた別にCA3-CA2-CA1経路がスイッチされ機能している可能性が示唆された。また、抑制性アデノシンA1受容体がCA2領域に他の領域に比べて高い分布を示すことも明らかになった。さらに、CA3-CA2-CA1経路が海馬内ではCA3-CA1経路とは若干異なる投射方向を持つことを考え合わせると、CA2領域は、CA3からCA1への興奮伝播のゲート的役割をもち、状態に応じて海馬内の信号の流れを制御する役割をいていると思われる。記憶のシナプスメカニズムの一つに、繰り返し刺激による長期増強(LTP)型シナプス可塑性が重視されているが、回路の切り替えによるnon-LTP型の記憶メカニズムが存在することを、この研究は示唆している。
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