研究課題/領域番号 |
09480230
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杉山 博之 九州大学, 理学部, 教授 (20124224)
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研究分担者 |
加藤 明彦 九州大学, 理学部, 助手 (80294875)
水上 令子 九州大学, 医療短期大学部, 講師 (00239302)
伊藤 功 九州大学, 理学部, 助教授 (20183741)
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キーワード | 脳 / 神経細胞 / 遺伝子発現 / 電気生理学 / 電子生物学 / 神経可塑性 |
研究概要 |
本研究の目標は、高等動物神経細胞の電気活動が、細胞の遺伝子発現等の代謝的な機能をどのように調節しているか、ということを解析することにある。この目的のため、vesl遺伝子に焦点を絞り、この遺伝子の発現調節の仕組みや機能を探索した。この遺伝子は、ラット海馬において電気生理学的な活動に依存して発現誘導される遺伝子として、我々(及び米国)のグループが見出したものである。本年度は、この遺伝子及びその遺伝子産物(蛋白質)のより詳細な特徴付けを行い、次のような知見を得た。 1: この遺伝子は少なくとも3つの類縁遺伝子(vesl-1、2、3)よりなるファミリーをなし、そのうち少なくともvesl-1と2にはスプライス変異体がある。 2: 電気活動に依存して発現誘導されるのはvesl-1の短型スプライス変異体vesl-1Sであり、その他はいずれも電気活動によって発現が誘導されることはない。 3: 3つの遺伝子によってコードされる蛋白質は、いずれも代謝調節型グルタミン酸受容体と結合し、その結合はこれらの蛋白質のN末端側半分の領域で起こる。 4: 電気活動によって発現が誘導されないもの(すなわちvesl-1S以外のもの)は全て、自己同士及び他と相互に結合する。結合はこれらの蛋白質のC末端側半分の領域で起こり、この領域を持たない短型スプライス変異体vesl-1Sは結合しない。 これらの知見から現在のところ、Vesl遺伝子の機能について次のように推定出来る。すなわち、構成的に発現したvesl蛋白質は代謝調節型グルタミン酸受容体と結合し、かつ相互に結合凝集することによって、受容体のクラスターを形成する(シナプス後膜において期待される)。電気活動によって発現するvesl-1Sは、受容体をクラスターから解放することによってシナプスの再編成を促進する形で機能することが期待される。
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