研究概要 |
我々は,ラットのGnRHサージジェネレーターは,視索前野にあるGnRHニューロンおよびエストロジェン受容ニューロン,および視交叉上核の生物時計ニューロンにより構成されていると考えている。 そこで(実験1),この視索前野と視交叉上核を生後5日齢の雌性ラットより別々に切り出して回転培養を行い,in vitroでのサージジェネレーターの作成を試みた。培養開始後4週間目から連続的に培養液を採取し,ElA法によりGnRH,バソプレッシンおよびVlPの分泌量を測定した。その結果,(1)エストロジェンを投与しない場合は,バソプレッシンおよびVlPの分泌には有意なサーカディアンリズムを認めたが,GnRHの分泌には有意なサーカディアンリズムは認められなかった,(2)エストロジェンを投与した場合は,GnRH分泌にも有意なサーカディアンリズムが認められ,その周期および頂点位相は,バソプレッシンのものと一致したが,VlPのものとは一致しなかった。従って,視交叉上核からの時刻情報はバソプレッシンを介してエストロジェン依存性にGnRHニューロンに伝えられ,それにより,GnRH分泌にサーカディアンリズムが発現したと考えられた。 次いで(実験2),発情前期臨界時刻前にバソプレッシンもしくはその拮抗剤を各々視索前野内あるいは脳室内に投与し,LHサージにおよぼす影響を検討した。その結果,(1)バソプレッシン投与によりLHサージの時刻が早まり,(2)拮抗剤投与によりLHサージの発現が阻止された。 さらに(実験3),エストロジェンの作用機序を知る目的で,視索前野のバソプレッシン受容体mRNAの発現量におよぼすエストロジェンの効果を検討した。その結果,エストロジェンは,視索前野のバソプレッシン1a受容体mRNAの発現量を約2倍に増加させた。 今後は,GnRHニューロンがサージ状分泌を起こす際のメカニズムを検討していく予定である。
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