研究概要 |
視覚野の可塑性はin vivoとin vitroの手法により研究されている。In vivoの研究では視覚体験を学習する視覚野の可塑性は感受性期に限られ、多少の時間遅れを伴って発現するが、その効果は一生持続することなどが示されている。In vitroの研究は主として切片標本の長期増強(LTP)として研究されてきたが、LTPがIn vivoの研究で示された特性をもつことは確認されていない。これまでの研究でラット視覚野に2種類のLTPが発現することを見出した(Kurotani et al,1996)。fLTPは早いdynamicsをもち(ピーク時間5分以内)、成年ラットに発現し、NMDAの受容体の活性化により発現する。一方、sLTPは遅いdynamicsをもち(ピーク時間、20分-1時間)、若年ラット発現し、膜電位依存性Ca^<2+>チャンネルの活性化から,蛋白、RNA合成酵素の活性化を経て発現するなどsLTPとは異なる化学経路をもつことが明らかにされている。また光学的記録法によりsLTPが外側膝状体系の1次あるいは2次シナプスに柱状に発現し、sLTPは視覚遠心線維の軸索側枝系に水平方向に発現することも示されている。これらのことからfLTPは発達期の可塑性、fLTPは成長後の可塑性の基礎であると考えられている。さらに平成10年度の研究ではserine/threonine kinase阻害剤であるstaurosporineやprotein phosphatase 2Bの阻害剤であるFK-506,あるいはprotein phosphatase 1/2A阻害剤であるCalyculin AがfLTPの発現を用量依存的に抑制することが示された。これらの所見はserine/threonine protein kinaseがsLTPの発現に,またprotein phosphataseがfLTPの発現に関与していることを示しす.
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