網膜第二次ニューロンである双極細胞は、光刺激によって緩電位応答を発生する。伝達物質(グルタミン酸)の放出部位である神経終末部には、シナプスリボンと呼ばれる微細構造が存在し、シナプス小胞がこの構造に係留されている。本研究では、キンギョ網膜から単離した双極細胞にパッチクランプ法を適用して、シナプス終末部におけるCa電流の測定・開口放出に伴う微小膜容量変化の計測・放出されたグルタミン酸のバイオアッセイを同時に行った。その結果、1)双極細胞のCa電流が活性化されると1ミリ秒以下の遅延時間でグルタミン酸が放出されること、2)伝達物質の放出はCa電流が消失すると300ミリ秒以内に停止すること、3)シナプス小胞には即時放出可能な成分と動員後放出される貯蔵成分があること、4)シナプス終末部に存在するプロテインキナーゼCを活性化すると後者の貯蔵成分が増えること、が明らかとなった。また、定量的な解析から、5)リボンに係留されているシナプス小胞のうち、形質膜近傍のものは即時放出可能成分に対応し、形質膜から離れたものは貯蔵成分に対応することが示唆された。さらに、網膜スライス標本を用いて、シナプス結合している双極細胞とシナプス後細胞から同時電流記録を行い、シナプス伝達を検討した。その結果、6)シナプス後細胞の樹状突起には、グルタミン酸受容体のうち、非NMDA型受容体は双極細胞の伝達物質放出部位直下に存在し、NMDA型受容体は放出部位からやや離れた部位に存在すること、7)この様な受容体の配置によって、シナプス後細胞は速い立ち上がりと持続的な応答をすることが可能になっていること、が明らかになった。゙
|