カカゲザル(チコ、3才、メス:ゴロウ、1才、オス)の運動前野と運動野をおおう部分にグリッドシステムを埋め込み、無麻酔下で、GABAa阻害剤ビククリンの微量注入および脳内微小刺激が出来るようにして、運動前野と運動野の刺激と注入を行った。そして、サルの遅延反応(遅延10秒)の成績と刺激効果とを相関させようとした。運動前野腹内側部の刺激で筋運動を誘発できなかったが、手の運動野を決定することは出来た。遅延反応に対する成績は、すでに報告したようになった(運動前野で功緻性と成績低下、運動野で功緻性低下)。ついで、運動前野腹内側部(右)を電気焼却で破壊し(人工梗塞)、手の運動に対する効果、および遅延反応に対する効果を観察した。手で物をつまむ運動は、下手になり、遅延反応の成績は悪くなるが、4週間で回復した。手の運動の回復の経過を定量的に記載する努力を続けている。運動野へのビククリン注入で、運動功緻性低下と遅延反応の成績低下が起こった。このことは、運動野が、破壊の後、新しい能力を持つように変わったことを意味する。1頭のサルで破壊と注入の脳内場所を組織学的に決める作業を行っている(もう1頭は、まだ、注入実験の継続中である。
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