アカゲザル6頭に手を使う課題(遅延反応課題またはゴーノーゴー課題)を学習させて、運動野および運動前野の手の領域(脳内微少刺激、またはGABAaアンタゴニストのBicucullineの注入で誘発される前腕屈伸筋の同時の痙攣性収縮によって、場所を同定する)を、直流電流を流すかNMDAレセプターのアンタゴニストのカイニン酸を微量(近隣に数カ所以上)注入して、小人工梗塞巣を作った。その結果、運動野でも運動前野でも人工梗塞の後には、1)対側の手指筋の麻痺(反応時間と運動時間の延長、筋力の低下)と、2)課題遂行の能力の低下が起こった。運動野では1)の効果が、運動前野では2)の効果が強かった。両野で質的な差はなく量的なものであった。どちらも、注入後2-4週間で、徐々に注入前の状態に回復した。運動野梗塞後では回復の過程で、Bicucullineを運動野、運動前野に注入して起こる運動の変化(運動時間と反応時間の短縮)、課題の成績の改善から、運動野の機能低下、運動前野の促通効果および抑制効果の神経支配がどこまで回復したかが類推できた。小梗塞直後には、運動前野から運動野への促通効果は弱くなり、同時に抑制効果は消失する。だから、運動の速度が遅くなり巧緻性が低下する。課題の遂行、つまり手を使わせることででこれらの効果は梗塞前の状態に戻ったと言える。運動前野は新しく運動野支配の能力を獲得したと言える。5頭のサルの脳標本を作製し、破壊場所の検索を行っている所(1頭は、止むおえない研究の都合実験継続中)で、完了させることが出来なかった。運動前野から運動野へのGABA抑制による調節が、運動野、運動前野の梗塞のあと、最構成される、恐らく再学習されると云うのが、本研究の最終的な結果である。
|