研究課題/領域番号 |
09480244
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠井 憲雪 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60001947)
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研究分担者 |
平林 真澄 (株)ワイエスニューテクノロジー研究所, 発生生物学研究室, 主任研究員
三好 一郎 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10183972)
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キーワード | ヒトウイルソン病モデル / LECラット / ATP7B遺伝子 / 劇症肝炎 / 銅 / 胆汁 / 胆管線維症 / 鉄 |
研究概要 |
ヒトウイルソン病モデルラットLECは肝臓への銅の蓄積により劇症肝炎および肝癌を発症する。これはAtp7b遺伝子の変異によることが明らかになった。そこで、人の正常ATP7B遺伝子のcDNAをLECラットに導入したトランスジェニック(TG)ラットを作製し、その解析を行っている。本年は、胆汁での銅排泄におけるATP7B遺伝子の機能を研究するために、我々はTGラットの胆汁銅と病態の関係を調べ、さらに肝臓組織の銅と鉄の組織染色により、ATP7Bと銅と鉄および病態の関係を調べた。 [材料方法]ラットをペントバルビタールで麻酔し、胆管にカニューレを挿入し胆汁を採取した。そして胆汁銅濃度は原子吸光解析装置で測定した。また、肝臓組織片を4% paraformaldehydeで固定し、HEで染色した。さらに銅と鉄の検出のために、TimmとBerilina blue染色を行った。 [結果と考察]12〜30週令Tgラットにおける胆汁銅の排泄は非Tg(LEC)ラットのレベルの約2倍高かった。TGラットの肝臓組織研究では13週令で肝炎は発症しているが、炎症は軽く、劇症型には成らなかった。30週令では非TGラットでは全例に肝臓組織に胆管線維症が見られるが、TGラットには見られなかった。肝臓組織のTimm染色では同年齢の非TGラットと比較して、TGラットの銅濃度は有意な低下は見られず、鉄の濃度に有意な低下が見られた。 上記の結果は、LECラットにATP7BcDNAを発現させると、胆汁銅の排泄が回復し、劇症肝炎と胆管線維症からLECラットを救うことを示した。一方肝臓組織中の銅の含量はTGラットにおいても余り変化しないが、鉄の減少が見られ、ウイルソン病における銅と鉄の存在の割合が、劇症肝炎発症に大きな影響を与えている可能性を示唆した。
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