研究概要 |
生体の生理的・病的現象に関係する生物ラジカルの生体内反応を解析するためのin vivo計測法の一つとして,電子スピン共鳴(ESR)法が注目されている。しかし,ESR法を適用するためには,体外から機能性スピンプローブ剤を投与して,その挙動を追跡する必要がある。一方,デンドリマーは,分岐が規則的に連続し規制された構造を有した三次元状巨大分子である。デンドリマーは,その中心や最外殻への官能基の導入が容易であることから様々な機能を付与することが可能であり,また世代が上昇するにつれて,内部が疎,末端が密の構造を有し,内部空孔に低分子化合物を保持できる。 本研究では,スピンプローブ剤を内部に取り込ませたデンドリマーの合成を行い,その機能について基礎的知見を得ることが目的である。本研究で合成したデンドリマーは,内部にスピンプローブ剤を約1分子包含することが可能であり,また,末端を糖鎖で修飾しているため水溶性を付与することが可能となり,組織認識能を有することが期待された。そこで,スピンプローブ剤(Carboxy-PROXYL)包含デンドリマーを生体投与し,その投与挙動を観察した結果,スピンプローブ剤はデンドリマーに内包されたことにより体内寿命が約2倍延長したことを見出した。しかし,組織認識能の評価は,合成したデンドリマーが生体適合性が低かったため行うには至らなかった。より生体適合性の高いデンドリマーの合成を目的とし,脂肪族ポリエーテルデンドリマーの合成を試みたが,その性質については,今後の課題である。
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