| 研究概要 |
リン脂質極性基を有するモノマー、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を一成分とするポリマーを合成した。既存の医療デバイスに対して被覆材あるいは医療デバイスを構成している材料に対して添加材として利用することを目的に、溶解性、造膜性,分散性及び機械的強度などの材料科学的特性に優れ、その表面が良好な血液適合性を発現できるようなポリマー構造を探索した。これより,ポリウレタン,ポリスルホンに混合できるポリマーを得た。MPCポリマーを被覆した表面の解析についてはX線光電子分光計(XPS)及び透過電子顕微鏡(SEM)を利用し、熱的性質については示差走査熱量計(DSC)を用いて評価した。MPCポリマーを汎用医療用ポリマーに被覆し、in vitroにおいてウサギあるいはヒトの全血、血漿及びタンパク質の単独溶液からのタンパク質(凝固因子系、補体系を含む)の吸着、活性化反応を吸着成分の種類(免疫抗体法)、分布(金コロイド標識免疫抗体法)、配向及び変性(FT-IR、CD分光法)の観点から評価した。MPCポリマー表面で起こるリン脂質分子の吸着反応については水晶振動子を利用した微量重量測定法(QGM法)による動的解析と免疫抗体法による選択的解析を組み合わせて評価した。MPCポリマー表面に血小板多血漿(PRP)を接触させた後、粘着した血小板の機能について血小板内に残存するATP、ADP量を指標として解析した。さらに、血小板浮遊液を用いてポリマーに接触した血小板内のカルシウムイオン動態について蛍光プローブを利用して解析した。これらの評価の結果、MPCポリマー上にはリン脂質分子の吸着、これに対してタンパク質の吸着抑制が認められた。血小板系への影響も全くなく、優れた血液適合性を示すことが明らかとなった。
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