研究概要 |
本研究では、環境放射温度切り替え法に基づく実用的測定系の構築を行った。本手法においては、環境放射温度をステップ状に昇温させることによって、皮膚の熱浸透率(熱伝導率,比熱,密度の積の平方根)を画像計測する。本年度は、大容量のコンデンサ(500V,60000μF)からの放電の後、速やかに温度保持を行う回路に切り替えることによって、ステップ状の昇温を試みた結果、0.4秒以内に20℃の昇温を実現することができた。しかし本方式の場合、応答時間が当初目標の0.1秒よりも長く、さらに、温度のオーバーシュートが発生するなどの問題点があったことから、昇温時の温度を実測しつつ、目標温度に達した時点で放電回路を切り放す方式を試みたところ、0.1秒以内での温度変化が実現できる見通しを得た。さらに、前者の方式に基づく実測系を構築し、皮膚の熱浸透率,放射率の画像計測するシステムを作成したうえで、健常被験者60名に対する実測を実施した。本実験を通して、今回作成した実測系が、十分実用に耐え得るものである点を確認することができた。なお、1回の測定に必要とする時間は、当初目的としていた20秒を達成し、更なる短縮化も可能である。以上より、本年度は当初通りの、「熱浸透率の画像計測システムの構築」という目標を達成できたと考える。次年度は計画に基づき、レーザドップラ血流計との比較実験や、様々な年齢,皮膚の質の被験者群に対する測定を通して、本法の臨床的応用について検討すると同時に、放電制御方式に基づく実用的装置を作成する予定である。
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