1999 年度実績報告書

生体内分解性ポリロタキサンによる薬物運搬体の設計

研究課題

研究課題/領域番号	09480253
研究機関	北陸先端科学技術大学院大学
研究代表者	由井伸彦北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 教授 (70182665)
キーワード	ポリロタキサン / 生体内分解性高分子 / 薬物運搬体 / 溶液構造 / 酵素分解 / 超分子構造
研究概要	本研究では、生体内分解性ポリロタキサンを利用して新しい薬物-高分子の結合様式を有するインテリジェント薬物運搬体の設計を目的として研究を展開している。本年度は、多数のα-シクロデキストリン(α-CD)の空洞部を貫通したポリエチレングリコール(PEG)の両末端に細胞外酵素であるアミノペプチダーゼMによって分解可能なオリゴペプチド基として、ベンジルオキシカルボニルL-チロシルグリシルグリシン(Z-L-YGG)を導入した。具体的には、両末端にアミノ基を有するPEG水溶液をα-CD飽和水溶液に混合し、擬ポリロタキサンを沈殿として回収した。これを、保護基を導入したZ-L-YGGのジメチルスルホキシド溶液中に溶解し、縮合反応により両末端にZ-L-YGGを有するポリロタキサンを合成した。ポリロタキサン構造を、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルとゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)とから確認した。さらに、水溶性を付与するための化学修飾としてポリロタキサン中のα-CD水酸基をヒドロキシプロピル化し、末端保護基(Z基)を水素雰囲気下・パラジウム黒を触媒とした接触還元により脱保護した。得られたポリロタキサンの擬生理的環境下での分解実験を行ったところ、アミノペプチダーゼM存在下にてα-CDが放出したが、非存在下では放出されなかった。このことは、末端YGGのYG間ペプチド結合がアミノペプチダーゼMの触媒作用により切断されたことを示しており、細胞外酵素によるポリロタキサン末端認識に基づいたα-CD放出であると云える。一方で、生体内分解性ポリロタキサン中のα-CD水酸基にモデルペプチド薬物を導入する方法についても検討した。具体的には、生体内分解性ポリロタキサン中のα-CD水酸基をN,N'-カルボニルジイミダゾールを用いて活性エステルとし、一級アミノ基と温和な条件で反応可能な官能性基とした。これと、モデルペプチド薬物であるリジンを含むジペプチドとを縮合し、最終的にGPCにより精製してモデルペプチドを導入したポリロタキサンを合成した。ポリロタキサンへのモデルペプチド導入の確認を、1H-NMR,GPC,そしてアミノ酸分析から行った。ポリロタキサン1分子へ導入したモデルペプチド数は約8であった。このような合成法をもとに、ポリロタキサンの薬物担体としての検討を来年度は推進していく予定である。

研究成果

(8件)

すべてその他

すべて文献書誌 (8件)

[文献書誌] T.Ooya,K.Arizono,N.Yui: "Synthesis and characterization of oligopeptide-terminated polyrotaxane as a drug carrier"Polym.Adv.Tech.. 印刷中 (2000)
[文献書誌] 由井伸彦、大谷亨: "シクロデキストリンの超分子化を利用した高分子機能"日本油化学協会誌. 印刷中 (2000)
[文献書誌] J.Watanabe,T.Ooya,N.Yui: "Feasibility of hydrolyzable polyrotaxane aiming at implantable matrials"I.Artif.Org. 印刷中 (2000)
[文献書誌] J.Watanabe,T.Ooya,N.Yui: "Effects of acetylation of biodegradable polyrotaxcanes on its supramolecular dissociation via terminal ester hydrolysis"J.Biomater.Sci.Polym.Edn. 10. 1275-1288 (1999)
[文献書誌] T.Ooya,N.Yui: "Polyrotaxanes,synthesis,structure and potential in drug delivery"Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.. 16. 289-330 (1999)
[文献書誌] T.Ooya,N.Yui: "Biodegradable polyrotaxanes as a drug carrier"s.t.p.Pharma.Sci.. 9. 129-138 (1999)
[文献書誌] T.Ooya,N.Yui: "Controlled Drug Delivery: Designing Technologies for the Future,ACS Symposium Series No.752 (Ed by K.Park)"Supramolecular-structured polymers for drug delivery,American Chemical Society (印刷中). (2000)
[文献書誌] 由井伸彦、大谷亨: "バイオミメティックスハンドブック (長田義仁:編集)"新しい生分解性高分子による薬物送達システム、シー・エム・シー (印刷中). (2000)

1999 年度 実績報告書

生体内分解性ポリロタキサンによる薬物運搬体の設計

研究代表者

由井 伸彦 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 教授 (70182665)

研究成果

[文献書誌] T.Ooya,K.Arizono,N.Yui: "Synthesis and characterization of oligopeptide-terminated polyrotaxane as a drug carrier"Polym.Adv.Tech.. 印刷中 (2000)

[文献書誌] 由井伸彦、大谷 亨: "シクロデキストリンの超分子化を利用した高分子機能"日本油化学協会誌. 印刷中 (2000)

[文献書誌] J.Watanabe,T.Ooya,N.Yui: "Feasibility of hydrolyzable polyrotaxane aiming at implantable matrials"I.Artif.Org. 印刷中 (2000)

[文献書誌] J.Watanabe,T.Ooya,N.Yui: "Effects of acetylation of biodegradable polyrotaxcanes on its supramolecular dissociation via terminal ester hydrolysis"J.Biomater.Sci.Polym.Edn. 10. 1275-1288 (1999)

[文献書誌] T.Ooya,N.Yui: "Polyrotaxanes,synthesis,structure and potential in drug delivery"Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.. 16. 289-330 (1999)

[文献書誌] T.Ooya,N.Yui: "Biodegradable polyrotaxanes as a drug carrier"s.t.p.Pharma.Sci.. 9. 129-138 (1999)

[文献書誌] T.Ooya,N.Yui: "Controlled Drug Delivery: Designing Technologies for the Future,ACS Symposium Series No.752 (Ed by K.Park)"Supramolecular-structured polymers for drug delivery,American Chemical Society (印刷中). (2000)

[文献書誌] 由井伸彦、大谷 亨: "バイオミメティックスハンドブック (長田義仁:編集)"新しい生分解性高分子による薬物送達システム、シー・エム・シー (印刷中). (2000)

1999 年度実績報告書

由井伸彦北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 教授 (70182665)

[文献書誌] 由井伸彦、大谷亨: "シクロデキストリンの超分子化を利用した高分子機能"日本油化学協会誌. 印刷中 (2000)

[文献書誌] 由井伸彦、大谷亨: "バイオミメティックスハンドブック (長田義仁:編集)"新しい生分解性高分子による薬物送達システム、シー・エム・シー (印刷中). (2000)