研究概要 |
本研究では、材料と生体との相互作用について細胞の遺伝子レベルでの応答を評価することを目的として、材料と接触した細胞のmessenger RNA(mRNA)の発現を評価した。これまでに、高分子-細胞間の相互作用を解析し、生体適合性に優れた高分子材料を開発するための基本方針の確立を目的として、材料の炎症性、ストレス性について検討してきた。しかし、表面性状が一定でないため厳密な設計指針を得ることが難しいため、ナノメートル単位での分子配列が制御でき、成分や構成の設計が可能であるLangmuir-Blodgett(LB)法を用いて脂質単分子膜を高分子表面上に作成した。LB膜炎で細胞培養を行い、reverse transcription-polymerase chain reaction (RT-PCR)法により細胞のmRNA発現を評価した。 LB膜の作製には生体膜の主要成分であるリン脂質のL-α-dipalmitoyl phosphatidylcorine (DPPC),L-α-dipalmitoyl phosphatidylethanolamine (DPPE),L-α-dipalmitoyl phosphatidylserine (DPPS)を用いた。定法に従ってLB膜を作製し、ポリカーボネート製のcell disk上へ積層した。この表面にマウス繊維芽細胞であるL929を播種し、所定時間培養後RT-PCR法により評価を行った。対象となる遺伝子には細胞の接着に強く関与し、繊維芽細胞の主要な産生蛋白質であるType I Collagenをもちいた。 脂質単分子膜はその表面が親水性であるにも関わらず細胞接着数が多く、通常の高分子表面とは異なる挙動を示した。collagenのmRNA発現は、細胞培養用ポリスチレンシャーレ上では細胞の接着性は良くmRNA発現量も多かったが、LB膜上では細胞が接着しているにもかかわらずmRNA発現量は少ないという特異な傾向を示した。また、今回用いた脂質は同じ生体膜を構成しているリン脂質であるが、官能基や電荷の違いなどから異なる挙動を示した。
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