地球環境変動の海岸・沿岸域システムに対する総合的影響評価手法の構築

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09490002
• 研究機関: 茨城大学
• 研究代表者: 三村 信男 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 教授 (60133089)
• 研究分担者: 平井 幸弘 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (30181134) ; 柳 哲雄 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70036490) ; 磯部 雅彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20114374) ; 米倉 伸之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30011563) ; 海津 正倫 名古屋大学, 文学部, 教授 (50127883)
• キーワード: 地球環境変動 / 海面上昇 / 気候変動 / 海岸 / 沿岸域 / 影響評価 / 適応策 / GIS

研究概要

平成10年度には、以下に概要を示すように4つのサブグループ毎に研究を進めた。
(1) 環境変動のシナリオ及び基礎データ:全球大気モデルによる気候シミュレーションや診断モデルによる海域の計算を行い、北太平洋西部の台風活動が温暖化によって活発化する可能性があるなどの結果を得た。
(2) 海岸・沿岸域システムへの影響予測:過去の海水準変動に伴う地形変化の解析や衛星データ、社会・経済システムのデータの収集に基づいて、サンゴ礁、マングローブ、海跡湖地域などに対する海面上昇の影響予測評価を行った。地形分類のアルゴリズムやマングローブ立地変動予測モデルを開発し、また、高潮被害を予測するために、高潮の陸上遡上を含む数値計算モデルを構築した。
(3) 影響評価モデル:タイを5地域、産業を8部門に分け、社会経済モデルを修正・適用した結果、海面上昇によるバンコク全体で生産額の減少することがわかった。また、ベトナムとタイの沿岸地域について、主に洪水と海岸侵食の調査のまとめを行い、地域の脆弱性についてまとめた。
(4) 影響評価の統合化と適応策:海面上昇と高潮に対する水没、氾濫危険地域を判定するために、地形・標高、台風の強度と経路、人口、空港、湿地帯、サンゴ礁等に関するグローバルデータを収集し、GISによってそれぞれの影響地域を抽出した。また、IPCC等の国際機関で議論されている沿岸域管理や海面上昇に対する適応策の枠組みを調査し,ガイドラインの方向性や適応策の枠組み等を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Nicholls,R.J.and N.Mimura: "Regional Issues raised by sea-lovel rise and their policy implications" Climate Research. SI. 1-14 (1998)
• [文献書誌] Tsutsui,J.et al.: "The impacts of global warming on tropical cyclones-A numerical experiment with the T42 version of NCAR CCM2" 23rd Conference on Hurricanes and Tropical Meteorology,Amer.Meteor.Soc.1077-1080 (1999)
• [文献書誌] Yanggi,T.and T.Takao: "Seasonal variation of three-dimensional circulation in the Gulfof Thai." La mer. Vol.36. 43-55 (1998)
• [文献書誌] Kayanne,N.et al.: "Water circulation in a fringing reef located in a monsoon area:Kabira Reef,Ishigaki Island,southwest Japan" Coral reefs. Vol.17. 89-99 (1998)
• [文献書誌] Miyagi,T.et al.: "Mangrove habitat dynamics and sea-level change-A scenario and GIS mapping of the Changing Process of the Delta and Estuary Type" 熱帯研究. Vol.8-3. (1999)
• [文献書誌] 磯部雅彦・藤城透: "ベンガル湾奥における高潮遡上計算" 海岸工学論文集. 第44巻. 346-350 (1997)
• [文献書誌] Minura,N.et al.: "Ch.5 Impacts on Infrastructure and Socio-economic System:in Global Warming" Springer-Verlag, 244 (1998)
• [文献書誌] 平井幸弘: "湖沼の開発利用と環境保全:日本地形学連合編「水辺環境の保全と地形学」" 古今書院, 186 (1998)