臨床人間学の全学対象の総合科目の授業は前年度に比べ9年度は希望者数が増加し通年で行った。医学生対象の1年次必須のテユートリアルと3年次選択のアドバンストコースは前年度と同様に行われた。大学生対象に合計55回、大学院生を対象に7回、社会人を対象に13回行った。9年度始めて対象にした社会人にも大きなインパクトを与えることが判明した。 各学習者の感想文からは、臨床人間学の目指す人間の洞察へ近づこうとする意欲が伺えた。 教育ソフトとしての臨床人間学の概略が固まりつつある。学習者へのインパクトの大きいテーマを選択することと、時事問題も取り入れることが大切であることが判明してきた。医学生と他分野学生との先端医療技術に対する意識の差が明らかになった。生殖医療技術から安楽死まで医学生の慎重さや保守性などが目立った。この意識の差について論文準備中である。 第29回日本医学教育学会大会でワークショップ「卒前医学教育におけるSGLの利点・欠点」で『入学直後のテユートリアルによる情意領域の教育』、第9回日本生命倫理学会年次大会で『生命倫理教育としての臨床人間学』、第3回日本臨床死生学会で『安楽死に対する大学生の意識-専攻分野と性とによる差異-』の研究発表を行ない反響を得、意見の交換を行った。 来年度の計画として、年間を通じて行う授業では、課題を生・老・病・死・人間で固めるのではなく、周期的にこれらのテーマを回る方式で試みる。看護学生を対象とした10回の授業、看護学教員を対象とした4回の授業を新たに計画している。各関連学会や研究会で研究成果の発表を行っていくことと臨床人間学の概要と各課題内容の紹介を中心に単行本としてまとめる予定である。
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