臨床人間学は、1)少人数討論と全体討論、2)生老病死などに関する判断を通して具体的に人間を考える、3)自分の問題として考え始める、4)倫理的判断のみならず人生・死などの意義や生きがいなどをも追求する、を特徴とする新しい人間性教育の方法である。対象として医学生・看護学生・一般大学生・大学院生・看護婦・ターミナルケア専門家・一般社会人に実践した。学習者のアンケートからは価値観の個人差に気付いた(4.8、医学生1999年の5段階評価の平均、以下同様)、人間について考える機会を得た(4.6)、などが高い評価を得た一般大学生を対象に筑波大学で通年行っている総合科目「臨床人間学」は、平成11年大学生の投票により49の総合科目の中から"筑波大学最優秀総合科目"に選出された。テュートリアル「人間学入門」は医学生を対象に必須科目として平成8年度入学生から実践するようになり、留年率が明らかに低下した。例えば1年次の留年率は必須化前4年間の平均が3.00%であったのが、必須化後平均0.67%となった。これは医療の心が理解できた(4.4)、勉学への意欲が沸いた(4.3)、などの評価と呼応する。国際的にも倫理教育の方法は、具体的症例、少人数討論、各種の専門職になる学生の混成、が良いとされてきた。臨床人間学はこれらを全て備え、且つ上記の3)4)の特徴を加え、学習者に有益でかつ楽しいと評価された。
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