研究課題
基盤研究(B)
本年度は、全国各地の図書館、郷土資料館、博物館、旧家などに散在している近世農書の発掘・収集をはかってきた。収集した農書は、テーマ別に分類し、それぞれを以下の者が担当した。すなわち、農書研究の総括および〈特産〉〈畜産・獣医〉〈開発と保全〉〈絵農書〉-佐藤、〈漁業〉-伊藤、〈農村振興〉〈災害と復興〉〈本草・球荒〉-江藤、〈農産加工〉-江原、〈林業〉-加藤、〈園芸〉-君塚、〈農法普及〉〈学者の農書〉〈地域農書〉〈農事日誌〉-徳永である。収集した農書と関連史料は各担当者が個別に分析し、『日本農書全集』(農山漁村文化協会)に翻刻とともに現代語訳・注記・解題を付し、刊行してきた。その内容は、特産(第47巻、1997年4月)、開発と保全(第65巻、同年6月)、地域農書(第39巻、同年8月)、林業(第57巻、同年10月)、漁業(第59巻、同年12月)、農法普及(第62巻、1998年2月)と多岐にわたっている。また、これらの農書に表される農学と産業技術を日本の科学技術史のなかに位置づけ、その歴史的な性格を解明するとともに、農書における個々のテーマのそれぞれがもつ歴史的意義を解明し、あわせて東日本と西日本における在来農法の展開過程の比較検討を行なうため、研究会を開催した。佐藤は信濃国川中島平と寺沢家と『農業耕作万覚帳』について、伊藤は釣書・釣文化と金魚飼育書・金魚文化の系譜について、江藤は東南アジア農業との比較史的視点からのわが国近世農業研究の論点について、江原は近世の食品加工品の種類と対応する農書について、加藤は琉球王国における蔡温時代の農林政改革と風水の受容について、君塚は大坂・池田の園芸史料と特に『剪花翁伝』について、徳永は近世から現代までを見渡した日本の農法革命について報告し、討論を行なった。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)