研究課題/領域番号 |
09490022
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒沢 英夫 大阪大学, 工学部, 教授 (40029343)
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研究分担者 |
国安 均 大阪大学, 工学部, 助手 (00252594)
生越 専介 大阪大学, 工学部, 助手 (30252589)
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キーワード | Pd(IV)錯体 / Pd(I)錯体 / 有機パラジウム錯体 |
研究概要 |
本研究では、酸化数1や4の希な原子価のPd原子を含む有機パラジウム錯体を多数合成し、それらの分子構造、電子構造を解明するとともに、これらの構造に特徴的な変換反応を見出すことを目的とする。さらにこれら希原子価パラジウム錯体による有機小分子の選択的活性化反応を開発する。 1)Pd(IV)錯体の発生と捕捉 10年ほど以前にPd(II)有機金属錯体と有機ハロゲン化物の置換反応でPd(IV)が発生する可能性が本研究代表者によって提案された。本研究では分子内に炭素-ハロゲン結合を持ち、反応途中でこれが開裂してPd(IV)活性種を与える可能性のある有機パラジウム(II)の設計・開発を行った。その結果、Pd(η^3-CH_2C(CH_2Cl)CH_2)(C_5H_5)は極性の高い溶媒中で1分子的にC-Clヘテロリシスを行い、Pd(IV)メタラサイクル[Pd(CH_2C(=CH_2)CH_2)(C_5H_5)]^+を与えることが分かった。この錯体はまた、Pd(II)にトリメチレンメタン分子が配位する活性種とも見なせる。この活性種は2分子反応を通じてメチレン炭素とシクロペンタジエン配位子の間でC-C結合生成を行い、Pd(η^3-CH_2C(CH_2C_5H_5)CH_2)(Cl)を高収率で与えた。さらに系中にスルフィネートアニオンが存在すると、メチレン炭素とスルフィネートのO原子が結合した錯体Pd(η^3-CH_2C(CH_2OSOPh)CH_2)(C_5H_5)が得られることも分かった。 2)Pd(I)錯体の発生 ブタジエン存在下、Pd(0)錯体とPd(II)錯体PdCl_3を反応させると、ブタジエン架橋のPd(I)2核錯体[Pd_2Cl_3(μ-C_4H_7)]が高収率で得られた。興味あることにブタジエンが存在しない反応系ではPd(I)錯体の生成は全く起こらなかった。錯体にPd^I-Pd^I結合が存在することはX線構造解析で実証された。
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