研究概要 |
1.可視光による水の光酸化反応系を構築するために、剛直な平面構造を有する縮合環のペルフルオロ体を光増感剤に用いる光反応系の構築について検討した。ペルフルオロ化したフェナジン(F-Phen)は対応する水素化体フェナジン(Phen)のそれと比較してn-π^*、π-π^*遷移に基づく吸収はいずれも長波長シフトし、還元電位はPhenに比べて0.6V正側にシフトすることが分かった。含水アセトニトリル溶液に400nm以上の可視光を照射したとき、2-位が水酸基に置換されたF-Phen、1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-2-ヒドロキシフェナジンが生成し、かつベンゼンを共存させるとフェノールが生成することがわかった。本反応系では、F-Phenの可視光励起と引き続き起こる項間交差により生じた三重項励起状態が水の酸化反応に対する活性種となっており、ここで生成するヒドロキシルラジカルとF-Phen・-との位置選択性の高いラジカル置換反応によりF-Pherの2-位が水酸基に置換される。 2.含フッ素β-ジケトナトNd^<3+>錯体は有機溶液にて発光する。しかし本来禁制であるNd^<3+>のf-f電子遷移で励起を行う限り、その吸光係数(ε<30M^<-1>cm^<-1>)が極めて低いために発光強度は小さい。そこで吸光係数の格段に高い有機分子(ε>10000M^<-1>cm^<-1>)が配位子としてNd^<3+>と錯形成すれば、配位子からのエネルギー移動により間接的にNd^<3+>を高効率励起でき、発光強度が向上すると期待できる。新規に合成した光増感型Nd^<3+>錯体Tris (4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-pentadecafluoro-1-pentafluorophenyl-1,3-decanedionato) neodymium (III)の配位子励起時(λ=359nm)の発光強度はNd^<3+>イオン励起時(λ=585nm)と比較して約10倍となり、分子内エネルギー移動によるNd^<3+>イオンの発光を初めて確認した。
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