研究課題/領域番号 |
09490023
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柳田 祥三 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10029126)
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研究分担者 |
北村 隆之 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40294037)
村越 敬 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教授 (40241301)
和田 雄二 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (40182985)
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キーワード | フッ素 / 希土類 / 発光 / 振動エネルギー失活 / ネオジウム / エレクトロルミネッセンス / 光増感作用 / 非対称配位子 |
研究概要 |
1. Nd^<3+>イオンのf-f電子遷移は本来禁制である。しかし、イオンの周囲が非対称な配位子場となれば遷移の許容性が増す。本研究では、Nd(POA)_3(POA:perfluorooctanoyl acetic acid)およびNd(POM)_3(POM:bis(perfluorooctanoyl)mehtanoato)の発光寿命と量子収率を比較検討した。さらに吸収スペクトルからJudd-Ofelt解析を行い、MM2計算と併せて溶液内構造の検討を行った。Nd(POA)_3の発光量子収率及び発光寿命はNd(HFA)_3(HFA:hexafluoroacetylacetone)よりも大きく、Nd(POM)_3とほぼ同じ値を示した。4I9/2→2G7/2遷移の振動子強度はNd(POM)_3、Nd(HFA)_3、Nd(POA)_3の順に増加し、対称性が低くなる程大きな値をとるJudd-Ofelt強度パラメータΩ_2(Nd(POM)_3:2.2x10^<-20>cm^2、Nd(HFA)_3:14.8x10^<-20>cm^2、Nd(POA)_3:19.4x10^<-20>cm^2)とも良い相関を示した。Nd(POM)_3は完全な八面体構造であるのに対し、Nd(HFA)_3は配位水を有するため、非対称構造をとる。配位水のないNd(POA)_3に対しMM2計算を行ったところ、歪んだ八面体構造を示し、配位子による非対称化を指示する結果を得た。 2. 可視域に発光領域を持つEu(III)錯体について、配位子の光増感作用を利用した溶液中での発光(PL特性)の検討を行い、さらに積層薄膜中において、配位子に電子とホールを注入することによる発光(EL特性)についても検討を行った。EL素子の作製は真空蒸着法を用い、ITO基板上にホール輸送層(TPD)、Eu(HFA)_3の順に積層させ、対極にはAlを使用した。Eu(HFA)_3のPL特性において、光増感を経た発光量子収率は22%を示した。EU(III)の内殻励起による発光量子収率が50%であることから、配位子の励起状態からEu(III)へのエネルギー移動は約50%の高効率で達成されることが明らかとなった。この低振動型錯体Eu(HFA)_3のEL特性を検討したところ、減圧条件下において赤色発光が数時間観測された。配位子増感を経るエネルギー移動過程が重要であると考えられる。
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