研究概要 |
(1)平成9年度に人工的に溶原化しているファージの溶菌サイクルを誘導する方法でスクリーニングしさらに電子顕微鏡によりファージ粒子の存在が確認されたLPPグループラン藻の海産Phormidium属培養株を用い、溶菌課程の詳細を電子顕微鏡を用いて観察した。P.persicinunでは溶菌の誘導を行った細胞集団でほぼ100%の細胞で同時期に細胞中にファージ粒子が出現しその後溶菌が起こったことから細胞のほとんどが溶原性ファージに感染していると考えられた。一方他の2株(Phormidiumsp.NIBB1044,NIBB1051株)では、細胞集団の一部の細胞でファージ粒子の出現とそれに引き続く溶菌がまず起こり、その後残りの細胞の溶菌が観察された。遅れて溶菌した細胞の表面には最初の溶菌により放出されたと見られるファージ粒子が多数付着しているのが観察された。このことはこれらの株では細胞集団の一部細胞が溶原性ファージに感染している可能性が考えられた。(2)熱帯・亜熱帯外洋に普遍的に生息し現存量が大きくしかも窒素固定を好気条件で行うラン藻Trichodesmium sp.の海洋における現存量の調節に溶原性ファージが関与している可能性の培養系を用いた検討を平成9年度に続き行った。人工的に溶菌サイクルを誘起して得た溶菌液から蔗糖密度勾配法を用いて多量のファージ粒子分画を集めDNAとたん自分画をP.persidnumに感染したシアノファージと比較したが、両者はDNA、たん白いずれのレベルでも異なっていた。本研究で得られた成果の一部は98年6月ノルウェイのベンゲンで行われた藻類のウィルスに関する国際ワークショップで発表した。
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