研究概要 |
(1)平成10年度までに人工的に溶原化しているファージの溶菌サイクルを誘導する方法でスクリーニングしさらに電子顕微鏡によりファージ粒子の存在が確認されたLPPグループラン藻の海産Phormidium属培養株(P.persicinum Provasoli株)を用い、溶原化したファージDNA(プロファージ)の宿主への挿入部位特定を試みた。宿主DNAに組み込まれたファージDNAの制限酵素切断パターンは宿主に組み込まれていないファージDNAのパターンと異なることが期待される。そこで、制限酵素で切断したファージDNAをプローブとして用い、同じ制限酵素で切断した宿主(P.persicinum)DNAとファージDNAのサザン分析による制限酵素切断パターンの比較を行った。しかし宿主細胞集団では溶原サイクルに入ったファージの割合が少ない対数増殖期でも溶菌サイクルに入ったファージのコピー数が多いためプローブが溶原化していないファージDNAに反応したためと見られるバックグラウンドが非常に高く、溶原化したファージDNAの明確な制限酵素切断パターンを得ることが出来なかった。そこで、制限酵素で切断したファージDNAの断片をプラズミドに組み込み、増幅させたを用いたサザン分析を行ったが、組み込み部位をふくむファージDNAが組み込まれたプラズミドを得ることが出来なかった。プロファージを失った宿主を得ることを、溶菌誘導処理で溶菌しなかった細胞を選ぶことで試みたが、プロファージを失った宿主を得ることは出来なかった。宿主に比較的近縁な株でファージに感染していない株の検索を行い、ファージに感染していない可能性のある株を得たので、現在この株を使った解析が進行中である。(2)熱帯・亜熱帯外洋に普遍的に生息し現存量が大きくしかも窒素固定を好気条件で行うラン藻Trichodesmium sp.の培養株から人工的に溶菌サイクルを誘起して得た溶菌液から蔗糖密度勾配法を用いて多量のファージ粒子分画を得ることが可能となったので、ファージたん白分画の分離精度を行った。主要たん白は分子量約60,30,18kDaであった。これらのたん白はいずれもP.persicinum主要たん白の抗体とは反応しなかった。
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