研究概要 |
マイクロインジェクション法の効率化と自動化のため,マイクロピペットに超音波振動子を装着することによって受精卵細胞膜の刺入抵抗が計測できないか検討している. 最大の問題点は再現性の悪さである.その主因は振動子とマイクロピペットの接合法にある.両者をアロンアルファで接着しているため,系全体の共振周波数や位相に微妙なズレを生じ,刺入抵抗を再現性良く捉えることができなかった.また,両者を一直線に接合することが難しく,ピペット先端の横ぶれを生じ,刺入抵抗を正しく計測できないこともあった.その他の問題点として,刺入操作の繰り返しによってマイクロピペットを交換しなければならなくなると,振動子も同時に交換しなければならなかった.これはコストが嵩むばかりでなく,複雑な較正(周波数と位相調整)をやり直さなければならず,また発振装置の交換が必要になる場合もあり,実験を数多く重ねるのに障害となっている. 本年度は、この接合部の改良に的を絞った.マイクロピペットのみ交換するだけで同一振動子を繰り返し利用できれば,後者の問題点を克服できる.そして振動子内にマイクロピペットを通して固定できれば,接合部もなくなるため前者の問題点も克服でき,最終的に刺入抵抗の再現性向上につながるものと思われる. これを実現するため,プラスチック製の細い管を中央に包含する振動子を試作した.現在の問題点は振動子とマイクロピペットとの密着度である.密着度が不十分であれば通しやすい反面,振動子の高い周波数がピペットに伝わらず,刺入抵抗を計測できなくなる.きつすぎればマイクロピペットを通すことができず,振動子を破損する可能性もある.市販のマイクロピペット用ガラス管はミクロンオーダーで径が異なるため,この試作振動子に対して20-30本中1本程度しか使用に耐えるガラス管が見つからないといった現実的な問題もあり,さらなる改良が必要である.
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