研究課題
基盤研究(B)
脳磁場計測にかかわる方法論的諸問題を吟味すると同時に、その吟味を通した研究を推進することがこの研究課題の目的である。脳磁場での実験では、被験体は磁場が完全遮断された特殊な磁場シールドルームに入って刺激を観察し反応せねばならないが、この場合刺激提示装置や反応記録装置はそれが磁場を発生するものであるかぎり実験ブースにもち込めない。一方では、視覚や聴覚による刺激の呈示は認知心理学的研究では必須の要件でありこれを欠かすことはできないことが多い。そこで、被験体に適切な環境で刺激を提示するには工夫が必要となる。本研究の目的は磁場の影響を最小限におさえながらヒトの脳の高次認知機能の磁場計測による研究を行う方法を検討し支援システムを試作することにある。視覚刺激、聴覚刺激や記憶刺激の視聴覚提示のためのハード・ソフトウエアの試作がとその試作品のテスト試行が必要とされる。初めの2年で刺激提示装置からでるノイズをプロジェクタの可視光線に置き換えミラーを介在させたり、赤外線インターフェース、光ファイバーで制御したりするという技術を用いたシステムを試作した。さらに最終年度にはこれらの装置とソフトウェアを用いて実験を行なった。現在、生理学研究所等と共同研究を続行中である。具体的には聴覚刺激装置を用いたリーディングスパン(ワーキングメモリ容量)の測定を行った。これはスピーカーを用いない音声呈示法(空気圧振動)によるもので言語性ワーキングメモリの負荷によるピークアルファ波周波数のシフトの現象を検討した。視覚呈示ではミラーと高輝度液晶プロジェクタを用いた方法でCRT上に生成した仮現運動刺激を観察者に呈示した。これにより仮現運動が上下の視野で非対称な様相を呈し、脳内部位もそれに対応した変化を示すことがわかった。
すべて その他
すべて 文献書誌 (24件)