研究概要 |
内外の専門家によって蓄積されてきた動機づけに関する研究論文等を精査することによって,「内発的動機づけ支援手立て評定尺度(改訂版)」を開発することができた。この評定尺度は,交流感の充足手立て6項目,有能感の充足手立て6項目,自己決定感の充足手立て(間接的な手立て)9項目,自己決定感の充足手立て(直接的な手立て)16項目から構成されている。 この評定尺度を活用することによって,研究対象児に特定された小学校中学年期・高学年期にある学習障害児10名の内発的動機づけを支援する教育的手法の在り方について,事例研究的技法と統計的技法を踏まえて究明している。具体的には,交流感・有能感・自己決定感を充足させるために大切なものだと考えられる全充足手立て37項目の内のどれが重要であるのかを解明している。 事例研究的技法を踏まえた究明を例にあげるなら,10名の研究対象児の内から代表的な事例として抽出した3事例(「他校通級による指導の事例」「情緒障害特殊学級における個別指導の事例」「チームティーチングによる指導の事例」)に対して,この評定尺度を実地適用した授業記録を検討することによって,次のようなことが解明されている。すなわち,「交流感の充足手立ての中では『容認的に応対する』ことが重要である」「自己決定感の充足手立て(直接的な手立て)の中では『最適な課題を選定する』ことが重要である」「複数の手立てを連結・連動させることが重要である」等というのが,それである。
|