運転技術についての誤った自己評価、特に「過信」が事故原因の一つであることが知られている(Keskinen 1995)。本研究は、安全運転に直結した心身機能、特に危険認知能力について正しい自己理解をすすめ、安全運転のための自己管理を援助することを目的に計画された。申請者らが開発した診断テスト「予知郎」を用いて危険認知能力の診断を行い、さらに小集団討議を通してのフィードバックにより、自己評価の客観性を確かめる。本年度は以下の実験、分析及び教育用ソフトの開発を行った。 (1) 運転時の情報処理能力について、新開発の危険知覚訓練法の効果測定を行った。被験者10名(年齢19歳-25歳、男性9名、女性1名)を、実験群5名、統制群5名にわけ、アイカメラを装着して実走行運転を2度実施した。実験群には2回の実走行の間に危険知覚能力訓練を行った。両群において走行時の視線移動の差異の有無を現在分析中である。 (2) 「予知郎」で測定した危険源予知能力の因子構造を明らかにした。若者(19歳から21歳、男性125名、女性39名)と高齢ドライバー(65歳から85歳、男性133、女性10名)についてテストを施行した。危険源の因子分析を行い、次の3因子が明らかにされた;(1)顕在的危険、(2)潜在的危険源、(3)危険源探索の積極さ(バックミラーの確認)。この因子構造は若者も高齢者も変わることがなかった。各因子について年齢差、性差などが認められた;潜在的危険知覚能力については男性>女性、普通車運転者>バイクのみの運転者、ミラー確認について男性>女性、3つの危険知覚能力について若者>高齢者。 (3) 「予知郎」は市販のCD-ROMソフトで、テスト内容や提示ムービーは21場面に固定されており、柔軟性に欠けるので、新たな場面を容易に追加したり内容の変更が可能なツールを試作した。
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