研究概要 |
フィンランドのKeskinenらによる運転行動のヒエラルキーモデルによれば,運転技能のみの訓練はかえって安全性を損なう可能性がある。技能を訓練しても,自分自身の技能についての評価が実際以上に高い場合には不安全行動へと結び付くからである。ここに正しい自己評価能力の訓練が必要となる。本研究は,危険原知覚能力診断テスト(「予知郎」:文部省科学研究助成金(1994-1996)による)を使用して客観的な危険知覚(予知)能方を診断し,その結果を受講者にフィードバックするとともに,受講者たちの小集団討議を通してみずからの運転ぶりや他の参加者の意見を聴く中で自己の安全性についてのミラーリングを行なった。ミラーリングとは文字通り「鏡に自分を映し」,運転能力の安全性について長短を含めた自己の客観的姿をフィードバックすることである。この方法はフィンランドのMikkonenらによって特に若者への安全教育のために作られた安全教育の方法であった。スピードオーバーの傾向や仲間とのドライブでの不安全傾向についてあらかじめ若者の行動観察やアンケート調査を行なってデータを蓄積し,小集団討議の中で実態を知らせることを通して受講者自身の運転行動を考えさせるという方法が取られた。このトレーニングの特徴はトレーナーが参加者に「上から」教えようとする態度は一切取らないところにある。事実をフィードバックするところでとどめることによって生徒の反発を無くし,自ら自分の安全性を内省する機会を与えるのである。この方法は高齢者の安全教育にも十分使えると考えて,申請者らは危険予知能力についての自己評価能力(メタ認知能力)訓練法を危険源知覚テスト(予知郎)を使用して完成させた。
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