研究概要 |
1 被災者生活再建支援法は、世帯主義、年齢差別、所得制限の逆差別など不合理を多数内蔵するしくみである。年齢による差別なく、家族数など必要性に応じた、所得の増加で逆転現象を生じない支援システムが必要である。 2 地震保険は、保険料収入では成り立ちえない一般財源による支援制度であることから、後世代による土地所有者支援と位置づけられるので、大災害の場合にはみんな二K位の建物から出発する程度の支援に限定すべきであること、建物・地域の危険度に応じた保険料率の格差付けは困難であることを明らかにした。 3 まちづくり法制においても、都市計画法制、建築基準法制の細部に立ち入り、いわゆる二項道路、建築制限の法技術と補償の関連を検討した。 4 大震災対策の法制度設計に当たってはこれまでの憲法解釈が障害となっている。いわゆる個人補償論を排し、社会保障として均衡のとれる範囲で可及的に被災地域・被災者の復興に寄与する法制度を提案した。特に、家賃補助、住宅修繕費の支援を工夫し、高齢者対策としては、自己の財産を自己の人生の中で豊かに使い切るリバース・モーゲージの制度化を提唱した。 5 住宅の再建の現状、マンションの再建の隘路となっている法制度を分析した。いわゆる区分所有法は合意を前提とする私法のシステムであるため利害が対立しつつも迅速な決定が必要なマンション再建にはふさわしくないので、多数決による権力的な再建法制を検討した。 なお、イタリアの地震対策に関しては資料が入手できなかった。 これらの成果の一部を、日本公法学会「大震災対策における(憲)法解釈と法政策」(1998年10月)、建築学会(1998年11月20日)「安全安心なまちづくりの法制」、国連地域開発センター(11月4日),「日本の防災・災害法制」で報告した。 なお、被災者生活再建支援法附則に基づいて1999年から国土庁に設置された「被災者の住宅再建支援の在り方に関する検討委員会」に就任した。
|