この研究は、これまでの施策の法的な批判的評価と代替的な立法提案を念頭においている。特に、憲法との関係において、迅速に、公平に、必要性の度合いに応じてみんなを支援するという評価軸を立てて、震災後につくられた無数の法施策を逐一検討して、日本の立法はまだまだ頭が固く、縦割りの発想にとらわれ、統一的で適切な支援策はできていないと批判した。 まず、災害対策基本法などの改正、耐震改修法などによる応急対応策にはまだ平時の発想が残るとか徹底しないなど不十分である。静岡県、東京都などの地震予防対策条例も微力である。 避難所、仮設住宅、公営住宅という単線型住宅施策は費用対効果の点でも、公営住宅の造りすぎの点でも、コミュニティの破壊の点でも、また、避難所生活に耐えられない弱者の立場からも、不適切であり、遠方への一時移転も含めて、民間住宅の借上げなり家賃補助施策を中心とするように、災害救助法を改正し、厚生行政と建設行政を調整すべきである。これを円滑にするためにも、罹災都市借地借家臨時処理法は廃止すべきである。 再開発、区画整理、マンションの再建は、前記の評価軸からすれば、高く評価することはできず、建物は修理を中心に、まちは特に危険なところ以外は大改造しない、復旧型まちづくり手法の方が適切である。 地震保険の強制加入は法的にも実際的にも無理で、再建資金のない者のためにはリバース・モーゲージが有用である。 生活保護の運用は、震災でも硬直的で、第二生活保護のような柔軟な施策が望まれる。 自治体に大幅な裁量を認め、代わりに議会でしっかり議論し、条例化する法治行政のもとでの被災者支援策を講ずるべきである。 なお、ノースリッジ地震へのアメリカ政府の対応では、家屋の修理・家賃補助に迅速性が見られ、台湾地震における台湾政府の対応では、家賃補助、災害弔慰金などが迅速で、それなりに合理的な施策が見られることがわかった。
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