研究課題
本年度は、ウェーブレット解析の観測データへの応用として、地球科学的データを対象とした解析手法の開発を中心に研究を進めた。具体的対象として取り上げたのは、地震の加速度記録データおよび気象ドップラーレーダーの観測データである。加速度記録データに関しては原理的に直流成分がゼロでなければならない等の条件があるが、機器などから生じる観測誤差のため観測データは必ずしもこの条件を満たしていない。そこで本研究において、離散ウェーブレット展開にラグランジュの未定定数法を組み合わせたデータ補正手法を開発した。これは、従来の手法では補正がデータ全体に及ぶのに対し、時刻についても周波数についても局所的に留まる補正を可能にするものである。また誤差原因が推定できる場合にはそれに応じた補正特性を持たせることが可能な自由度を持っているのも特徴である。気象ドップラーレーダーデータについては、アメリカ・オクラホマ大学との共同研究として進めており、アメリカのレーダーネットワークから提供されたデータを用いてウェーブレットを用いたレーダー画像解析手法を開発している。本研究では、連続ウェーブレットによる画像処理によって、単一の生データからでは検出が難しいメソサイクロンを明瞭に検出できることを見出した。次年度においてはこの手法を自動化しまた風速場全体の推定を可能にする手法の開発を試みる予定である。本年度は、これらの研究と並行して6月と11月にウェーブレット解析の研究集会を開催し、ウェーブレット技術の現状の把握と大学・企業などの多様な研究者による討論を行った。
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