本年度は、超高真空試料作製室、試料導入室、クライオスタットの詳細仕様を決め、製作可能な装置の具体的な設計および製作を行った。まず、その最低限必要な仕様として以下を決定した。1)超高真空中で清浄表面をもつ金属や半導体試料を作製し、その表面上に必要なガス吸着や真空蒸着ができるような試料準備室をつける。2)超高真空中で、室温から液体ヘリウム温度まで温度域、磁場が8Tまでの環境で、試料の抵抗測定ができるようにする。3)測定の効率を上げるために、試料を大気中から導入できる試料導入容室をつける。 この仕様のうち、2)を実現するための室温部から極低温部までの1.2m垂直移動のための機構の設計が技術的に困難であった。磁気結合トランスファーロッドと超高真空ベロ-を用いる方法を、技術的に比較検討し、後者を採用することにした。移動は速度可変なモーター駆動とし、傾斜角度を変化させることができるように設計し、製作を行った。超高真空試料準備室、試料導入室などの超高真空容器および液体ヘリウムデュワ-もこの機構とうまく整合するように設計し作製を行った。また、これら超高真空容器を排気するためのターボ分子ポンプを選択し購入した。 上記により装置の全体像が決定したので、その他の部分の細かい部品等の設計を行っている。超高真空中で試料を移動するための試料移動機構や抵抗測定のための試料ホルダーの設計はほぼ完了し、現在抵抗測定機構や試料準備機構の設計を行っている。
|