本年度は、以下の事項について研究を行った。 1.電子描画装置の導入 超流動ヘリウム3薄膜の極めてまれな性質、すなわち運動量空間と実空間の両方において対称性に破れを持つ異方的な秩序状態にある液体薄膜の動的な性質を調べるために、インターディジタル電極による第3音波の励起を試みている。そのインターディジタル電極の作成のために電子描画装置を導入し、今年度はその設置と調整を行った。来年度以降本格的な電極作成を行う。 2.テスト用セルとヘリウム4による予備実験 シリコン基板に電極を作成し、予備的な実験を行った。10μmの間隔をもつ電極間に100V程度の電圧を加える必要があるが、シリコンでは低温においてもある閾値以上の電圧において非線形現象に起因すると思われる大きな電流が流れ、発熱の原因となることが明らかになった。シリコンには電子描画を行う上での多くのメリットがあるが、今後シリコン以外の基板の使用を検討して行かなければならない。 3.超流動ヘリウム3の自由表面の研究 薄膜は固定基盤と液体の界面と自由表面の両方で限られた空間に閉じこめられたシステムである。これと類似な系として超流動ヘリウム3の自由表面も低次元フェルミ液体として関連した興味深い系である。我々はヘリウム液面上に2次元電子系を作成して、その伝導度およびプラズマ振動を用いて自由表面の研究を行った。
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