研究概要 |
本年度は,1)小型タンデトロン加速器でマイクロビームを作るための四重極レンズの導入,2)前年度に完成したサンプルチャンバーの性能テストと分析法の開発,3)解析ソフトの購入,の3点を中心に研究が進められた. 四重極レンズについては,現在,東京電子株式会社と共同で開発中であり,解析ソフトもカナダのゲルフ大学から購入中である.そこで,その間に大型汎用加速器を用いて,サンプルチャンバーの性能テストが行われた.これまでは大型汎用加速器を用いて安定な細束ビームを作るのは困難であったが,ビームラインでのビーム透過率の向上を図ることによって,直径50μmまでビームを絞ることが可能になった.サンプルチャンバーの性能テストでは,ステージ制御の高い再現性とモニター上のスケールバ-の正確さが確認され,絶縁試料でもターゲット電流と積算電荷をほぼ正確に測定できることが確認された.また,測定では試料室に由来するX線が認められなかったので,試料室からのバックグラウンドは殆ど影響しないことが分かった.更に,ビームサイズの調整では,蛍光鉱物の発光の大きさとX線測定によるビームサイズがほぼ一致したことから,蛍光鉱物上で簡便にビームサイズが決定できることが明らかとなった. 本研究では,高温高圧実験試料と流体包有物の非破壊分析に主眼を置いているので,それらの予備的な分析を通じてその測定法の検討も行われた.分析には,Na-Znの軽元素測定用とZn-Uまでの重元素測定用の2つの半導体検出器を使用した.その結果,1)軽元素用と重元素用の2つの検出器の利用によって,高温高圧実験試料と流体包有物に含まれる元素が正確に確認できること,2)流体包有物の分析では包有物を覆う石英の厚さを薄くする必要があること(-5μm以下),3)ビーム径を流体包有物のサイズよりも小さくする必要があること,が明らかとなった.
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