研究概要 |
中央海嶺における熱水活動や,沈み込み付加体の冷湧水活動は,海洋における化学現象の中でも特に時間変動や空間変動の激しいことが知られている。本研究は,このような時空間変動を,現場化学分析の手法によって詳細に検知するシステムを,世界に先駆けて試作することを目的としている。具体的には,深海底(深度4000m)に,数日から数週間程度継続して設置でき,その間周囲の海水の化学組成を連続して自動分析できる,長期型現場化学分析システムの試作と改良を行う。本年度は,化学分析系として,高感度の化学発光検出法を採用し,熱水や冷湧水の重要な指標であるマンガンまたは鉄を分析するシステムを試作した。長期間の分析フロー制御のために,通常のフロースルー分析に用いられるペリスタルティックポンプでなく,微流速で長時間の使用が可能なダイアフラム式ポンプを採用した。平成9年7-9月にかけて行われた「しんかい6500」による東太平洋海膨南部における熱水活動調査の際に,試作装置を「しんかい6500」に搭載して現場データの回収に成功した。また試作装置を水深2600mの海底の設置して長期係留テストも実施した。研究成果の一部を、平成9年11月にフランスの西ブルターニュ大学で開催された国際ワークショップ「海洋モニタリングのための分析化学的手法」で発表した。
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