ホウ素中性子捕捉療法に於いて、最もガン細胞内のホウ素濃度が高いときに中性子照射を行うことが治療効果を上げる鍵となるが、現在まで生体内でのホウ素分布を経時的に観測する方法はない。我々は、脳のMRイメージングに利用されているGd-DTPA(“マグネビスト″の名で上市)を^<10>Bキャリアーに導入した、ガドリニウム-ジメチレントリアミン五酢酸ーカルボラン複合体を設計し、合成に成功した。そして、既に臨床応用されているMRI造影剤マグネビストとの生体内における挙動の相違について、担ガンラットを用いて検討した。合成した化合物をラットに投与した後、5分後、20分後、60分後、ラットの臓器を取出し、おのおののガドリニウムの濃度をICP-AES法を用いて測定した。その結果、合成した化合物は脳および腫瘍にはあまり取り込まれず、むしろ肝臓、腎臓、肺といった部分に多く蓄積していることが分かった。さらに60分後には化合物は、ほとんど代謝されていることが分かった。臓器のMRイメージングには、十分その機能を果たしていたが、腫瘍組織への選択的蓄積性に関しては、ほとんど期待できない。
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