ホウ素中性子捕捉療法に於いて、最もガン細胞内のホウ素濃度が高いときに中性子照射を行うことが治療効果を上げる鍵となるが、現在まで生体内でのホウ素分布を経時的に観測する方法はない。我々は、脳のMRイメージングに利用されているGd-DTPAを10_Bキャリアーに導入した、ガドリニウム-ジメチレントリアミン五酢酸―カルボラン複合体を設計し、合成に成功した。そして、合成した化合物を担ガンラットに投与した後、15分後および60分後、ラットを-80度の低温バスで凍結し、縦断面をスライスしたものを特殊フィルムに張り付け、中性子を照射した。このようにして得られたフィルムをαラジオオートグラフにより生体内ホウ素分布を測定した。その結果、合成した化合物は腫瘍の特に内部の壊死部分に取り込まれたが、腫瘍活性部分である外側の組織にはあまり取り込まれていないことが分かった。さらに60分後には化合物は、腸管部分より代謝されていることが分かった。臓器のMRイメージングには、十分その機能を果たしていたが、腫瘍組織への選択的蓄積性が見られないことからホウ素中性子捕捉療法への応用は困難である。
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