銀とアンチモンの電気化学的な析出を行うと、電極表面一体に唐草模様や縞模様が自然に発生する。これは、銀とアンチモンが均一に電析されるのではなく、空間的な濃度の不均一が自然に発生し、しかもそれが電極表面を覆うほど長距離的な秩序を自己組織化する極めて特異な非線形電気化学反応であると言える。この空間的な自己組織化が起こる原因を解明している。現在のところ確定した結論を得るに至っていないが、アンチモンの析出には、その臨界核を形成するために極めて大きな過電圧を必要とすることにより、アンチモンクラスター周囲でのアンチモン析出の速度が、クラスター形成の速度に比べ著しく加速される自己触媒的な作用があることが明らかになった。また、超伝導磁石中で電気分解を行い電極近傍の電解液の流れを電磁流体力学的に制御したところ、縞模様は流れの方向に垂直に形成され、その伝播方向は流れに平行であることが明らかになった。アンチモンと銀は、その2次の光非線形感受率が極めて異なるために、パルスレザーで表面を照射したときに発生する2次高調波強度が表面の組成によって大きく異なると期待できる。現在、波面の綺麗な固体レーザーからの光パルスを反応表面に照射し、表面で発牛する2次高調波像を顕微観測できる装置を作成中である。本装置を用いて、アンチモンと銀の共析形の空間パターン形成の時間発展を子細に観測し、よってその反応の機構を解明することを試みる予定である。
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