近年、柔らかい固体である有機固体、分子結晶や金属錯体固体に高圧を加える実験が盛んに行われている。電気測定あるいは光学測定を通じて、超伝導性の発現など目覚ましい成果が挙げられている。これらの分野では、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた測定が主流となりつつあり、その圧力の上限は20GP_aを超えている。そしてさまざまな相転移現象の報告が相継いでいる。本研究は、これまで我々が培ってきたBe-CuセルとFaraday天秤の組み合わせによる高圧下の磁気測定技術を利用し、近年市販されている小型のDACを非磁性化、つまりダイヤモンドをクランプしている金属部分をBe-Cuにすることにより、DACとFaraday天秤の組み合わせから、より簡便で高精度の、しかも誰にでも使える超高圧下磁化率測定システムの立ち上げを目的としている。本年度は、現有のFaraday法磁化率測定システムのクライオスタットの改造を行った。現有システムでは試料管内径は30mmであるが、使用予定のDACは直径30mmであるので、試料管内部の熱輻射筒をひと回り大きくし、40mmとした。また熱平衝達成時間の短縮化を図るため、この筒の外側にヒーターを巻き、温度上昇速度を速めた。DACは清水製作所に製作を依頼した。セルの完成を待って、測定システム全体の立ち上げを行う。
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