本研究では、ダイヤモンドアンビル(DAC)とFaraday天秤の組み合わせによる、簡便で高精度の超高圧下磁化率測定を目的とした測定システムの立ち上げを行った。具体的にはDACの非磁性化と、測定計の改造を行った。 近年市販されている小型のDACを、BeCu合金製にすることで非磁性化を行った。DACの製作は東芝タンガロイ社に依頼した。DACの総重量は約90グラムとなり、現有の天秤を使用可能な範囲におさまっている。予備的な加圧実験を行っているが、セルをBeCu合金製にしたことによる機械的な不具合などは、今のところ起きていない。ガスケットには、通常のDACを用いる実験ではインコネル合金製などが用いられ、予備実験にはインコネル合金のものを用いている。現在、磁気測定用のBeCu合金製非磁性ガスケットを用いた加圧実験の準備も行っている。DACの直径は30mmであるが、既存システムの試料管内径は30mmであったので、内径40mmの試料管内筒を新規に製作した。測定系に組み込み、室温での試運転を行い、温度制御系などの正常動作を確認した。今後、標準試料を用いた温度較正を行う。システム全体としては、装置の作成が完了し、低温超高圧実験のための調製を行う段階にまで到達した。 このシステムの完成を見越して、超高圧下での興味深い磁性を期待しうる試料の探索も行ってきた。計画当初、測定を予定していたハロゲン化銅の低次元磁性体の他に、最近分子磁性の分野で注目を集めているプルシアンブルー型の磁性体についても検討を行った。ピストンシリンダー型の高圧セルを用いた 1 GPa までの高圧磁気測定を行い、磁気相転移温度が大気圧での 29 Kから 1 GPa で 40 K まで増大するという結果を得ており、超高圧下での磁性に興味が持たれる。
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